子供は母国語の発想で育つ--一般動詞フレーズ編

電子出版「ネイティブの子供に学ぶ英会話入門」より抜粋  

一般動詞のフレーズを身につける

中嶋:「ネイティブは、赤ちゃんでも英語を話している」という冗談があるよ。

Kenny:それじゃ英米人はみな天才だ。(laughing)

中嶋:もちろんこれは何年も学びながら英会話ひとつできない日本の現状を皮肉ったものだよ。

Kenny:日本人はどうなの?日本の赤ちゃんは日本語をすぐにぺらぺら話し出すの?

中嶋:そんなことは決してないよ。親は幼い子供に、毎日毎日片言で話しかけるんだよ。もちろんむずかしい表現はしない。それは子供にオウム返しをさせるためだよ。くりかえしによっていつしか子供はことばを獲得していく。親は子供が片言でも話せばこの上なく喜び、始めて「ママ、おっぱい」と言ったときの両親の喜びは世界共通のものだよ。

子供 「ママ、おっぱい

Kenny:ネイティブの子供も負けてはいないよ。

A child : Mom, milk!

中嶋:ところがね、少し時が経過すると語順が異なってくるんだ。そしてこれが大問題なんだ。

子供 「ママ、おっぱいほしいよ

Kenny:ネイティブの子供なら次のように言うよ。

A child: "Mom, Want milk!"

中嶋:日本人の場合はママが毎日「おっぱいほしい?」聞くから子供はその通りオウム返しをしてそのまま答えるんだね。

Kenny:私たちはママがwant milk?と聞くから、そのままwant milk.と答えるだけのことだよね。

中嶋:「おっぱい」がmilkだということは別にして、語順に決定的な違いが出てくるのは、実に簡単なこと。あなた方は英語の環境で育ち、私たちは日本語の環境で育ったということだよ。

Kenny:どちらの子供たちも親の言葉をオウムのようにまねるんだね。

中嶋:私たちは、親が「おっぱいほしい?」と問いかけるから、「おっぱいほしい」と言えば、おっぱいが出てくることを知り、あなた方は、Want milk?と問いかけるから、Want milk.と答えるということだ。いずれにしても国文法や英語文法を学んだからそんな語順で話したのではない。日本語でもそうだが、親は子供が早く話せるようになることを祈り、子供がオーム返しをしやすいように話しかけるというわけだ。

日本語の発想
ママ 「
おっぱいほしい?」 上げ調子で
子供 「
おっぱいほしい

英語の発想
Mom:
Want milk? 上げ調子で
A child:
Want milk.

中嶋:ところで子供が「あなた=you」「わたし=I」を認識するのはかなり遅れるだろうね。日本の子供は「わたし」「ぼく」と言えるまでに、「花子、おっぱいほしいよ」などと言うよ。ふつう親は子供の名前を呼びかけるからね。

日本語の発想
ママ 「花子、
おっぱいほしいの?」 上げ調子で
子供 「花子、
おっぱいほしいよ

Kenny:ネイティブもそれはまったく同じだ。もちろん始めは親のもくろみ通りにはいかないが、毎日くりかえしている内に、いつのまにか、Iとyouの意味が分かってくるみたいだね。

英語の発想
Mom: Lucy,
want milk? 上げ調子で
A child: Lucy,
want milk.

中嶋:そう、親の涙ぐましい日頃の努力が実を結ぶ時がやって来るということだ。

日本語の発想
ママ 「
あなた、おっぱいほしいの?」 上げ調子で
子供 「わたし、おっぱいほしいよ

英語の発想
Mom: Do you
want milk? 上げ調子で
A child: I
want milk.

Kenny:日本の英語の授業でwant milk?などと教えると叱られるだろうね。

中嶋:まったくその通りだよ。しかしね、ここに重大な秘密が隠されているんだ。それは後で追々理解していただくことにして、ここではDo youやIという部分とwant milkの部分が切り放されているということに注目して欲しいね。

Kenny:そうだね。これがあなたが主張しているファンクションメソッドそのものだからね。

■ことばは小から大へと拡大する

中嶋:今まで述べてきたことをまとめておきたい。以下にあげたのが、ネイティブの子供と日本人の子供のことばを拡大していくプロセスだ。

Kenny:当たり前だけど、どちらの親も文法がどうのこおのとは言わないということだね。

Mom, Milk!   ママ、おっぱい!
Want milk. おっぱいがほしいよ
Lucy, want milk.   ルーシーはおっぱいがほしいよ
I want milk.   わたし、おっぱいがほしいよ
I would like beer. わたし、ビールがほしいよ

中嶋:ところが私たちが中学校で初めて体験した英語の姿はまったく違っていた。とにかく I want milk.と言わなくては絶対通じないものと教えられたんだ。だからこのIが自分のことを指しているという実感もないままそれを丸暗記した。Mom, milk, please.も言えないのに、I want milk.と丸暗記させられた。赤ちゃんの表現もできないものが始めから大人のことばのまねをさせられたんだよ。だから大の大人になってBeer, please.(ビールください)といった簡単な表現もできない。

Kenny:それにしても日本の学校英語教育の批判については熱が入るね。

中嶋:しかし、大の大人に赤ちゃんのまねをしろというのではない。もう1度そのような片言英語からきちんとした英語に組み立てるプロセスを追体験したり、初歩的な片言表現からことばを進化させていくプロセスを踏まえることが何より大切だと思うんだ。

Tom, Milk? トム、おっぱい(ほしいの?)
Want milk? おっぱいがほしいの?
Tom, want milk? トム、おっぱいがほしいの?
Do you want milk? あなた、おっぱいがほしいの?
Would you like beer? あなた、ビールがほしいの?

>>>>以上の英語の発想をいかして次のwantとlikeの動詞フレーズでセルフラーニングしていただきたい。

wantの動詞フレーズ
likeの動詞フレーズ

セルフラーニングをしていただいたと思いますが、どうして子どもでもいとも簡単に長い表現ができるようになるかわかっていただけましたか?

Mom, Milk! ママ、おっぱい!
Want milk. おっぱいがほしいよ
I want milk. わたし、おっぱいがほしいよ
I would like beer. わたし、ビールがほしいよ
I want to drink milk. わたし、おっぱいが飲みたいよ
I would like to drink milk. わたし、おっぱいが飲みたいよ

Mom, Milk! ママ、おっぱい!
Like milk. おっぱいが好きだ
I like milk. わたし、おっぱいが好きだ
I like drinking beer. わたし、ビールが飲みたいよ、飲むのが好きだ

Do you want to~?「〜したいですか?」をていねいに表現すればよりWould you like to ~?となりますが、次のような発想で文を作ってください。

Drink beer?
(上げ調子で)
--> Want to drink beer? --> Do you want to drink beer?
Drink beer?
(上げ調子で)
--> Like to drink beer? --> Would you like to drink beer?

これが英語の発想なのです。言葉というものは小から大へ発展するもので、その逆ではありません

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