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日本式訳読法について

これでは英語は話せない(日本式訳読法について)


日本式訳読法は一口に言って、後戻り訳主義です。つまり英語の語順と日本語の語順が異なるので、そうしなければなめらかな日本語にならないからです。
しかしこれは昨日今日に誕生したのではありません。実は江戸時代からの伝統なのです。参考に次の文を見てください。これはあの幕府通訳方のジョン万次郎が著した本から引用したものです。彼は漁師であり、遭難したときアメリカの捕鯨船によって救助され、アメリカで教育を受け日本に戻ってきた人です。

    アイ アム ハペ ツ シー ユー イン グーリ ヘルス
    I am happy to see you in good health.
    わたくし よろこぶ ことを みる おまんの おけるを よきうまきことに
    中浜万次郎「英米対話捷怪」安政6年(1859年)

(実は、この文には漢文のようにレ点や一、二、三などの返り点がついていますが、ここでは省略しています)

この文を見てまず気づいていただきたいのは、発音です。happy=ハペ、good=グーリ、妙にアメリカ英語の発音に近いことです。明治時代に著された英会話の本の方がネイティブのそれに近く、時代が下るにつけて発音がローマ字に近いものになっていくのは、「生の英語」より「翻訳・読解」に教育の重点が置かれるようになったことを知ることができます。
しかしこの文を見て私たち、日本の英語教育の洗礼を受けたものは、例外なく次のように訳します。

    わたくしは、よきうまきことにおけるおまんをみてよろこぶ

なぜならいやというほど、学校時代に次のような説明を受けたからです。

「be happy toは熟語です。「?してうれしい・幸せだ」という意味で、喜怒哀楽を表し、副詞的用法の不定詞を導きます。」

私たちは、英文を見るとまず主語を訳し、後ろから訳し、動詞に戻ってくるという発想を身につけさせられたわけです。これを「後戻り訳」といって、読解のためのメソッドと言えるでしょう。

しかし、これはあくまでも日本語の発想であって英語の発想ではありません。私たちは英文を元にして日本語の勉強をしてきたと言っても言い過ぎではないでしょう。これは漢文の勉強とまったく同じです。漢文の先生に中国語を話せと言ってもお困りになるでしょうが、英語の先生に英語を話せと言ってもやはりお困りになるのは実はこのことなのです。いくら生の英語の英会話文を教科書に登場させても、あるいは英会話の授業をいくら増やしても、教える者が読解メソッドの受験英語の成果で教えている限りは、日本人はいつまでも英会話などできないと私は思っています。
古い革袋に新酒を入れてもダメということです。

それならどうするか、ということですが、私は後戻り訳ではなく直読直解を進めなければならないと思います。私は10年ほど前の最初の著作でそれを訴えましたが、最近そんなメソッドが増えてきたと思い、うれしく思います。
ただ、直読直解もすでに大正時代に浦口文治が「グループメソッド」という一種の直読直解法を発表しています。これは一口に言うと、「文の頭からセンテンス・グループで訳していく」方法です。
また岡倉天心の弟、岡倉由三郎(彼はC.K.OgdenのBasic Englishを日本に紹介した人)は、後戻り訳を批判し、「英文解釈の手続きの中で、日本語はいわば媒酌人で、もっと大切なのは(英文から原意に至る)反射作用というところにある」と指摘する人もいました。

私は、その時代その時代の教授法があって当然だと思います。当時、文献から外国文化の流入を必要とした時代には、それに適した「後戻り訳」という読解法が必要だったのです。それが遅読や聴解不能(リスニングができないこと)の原因となってもそれが時代の要求に適したものでありつづけたのです。
しかし英語が動くこともなく、まるで行灯のもとで時間をかけて解読すればいい時代はすでに過ぎ去りました。

最初に登場した英文ですが、英語の発想では次のようになっています。

    うれしいよ
    Happy!
    私、うれしいよ
    I am happy.
    なぜなら君に会えたからうれしいんだよ
    I am happy to see you
    しかも君は、よい健康状態じゃないか
    I am happy to see you in good health.
    つまりHappyやI am happyと素直に口から出ない者が、この文を丸暗記しても果たして自分のことばとして表現できるのでしょうか。

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